【anone】偽物でも本物でもどっちでもいい。帰る場所はどこにあるのか。

ネタバレ含みます。

 

大好きな坂元裕二さんの作品。このドラマに関しては一言でいうのが難しいですね。「社会に馴染めない人が偽札を製造する話」と言ったら簡単だけど、そんなんじゃ言い表せない。「ひとこと」で表せるものが流行るって聞いたことがあるけど、たぶんそんな理由で視聴率が低迷したのかな。なんて思ったり。違うと思うけど。

とにかく「偽物」ってなんだろうってすごく考えました。亜乃音さん、ハリカちゃん、持本さん、青羽さん、中世古さん。みんな多分、自分を価値ある人間だと思わないで生きている。就職活動で自己アピールでうまく取り繕えないタイプの人間。愛おしいよね。けど、世の中は厳しいよね。そういう人はいっぱいいると思うけど、たいていの人が偽物の仮面を身につけて戦うんだよね。大学時代の経験を盛ってみたり、本当はネガティブで暗いけどポジティブぶってみたり。でも、なんか違う。だから面接で落ちる。この物語に出てくる登場人物たちは、偽物のフリすらできないタイプの人間な感じ。素直すぎてね。

 

偽物ってなんだろうっていうより「本物ってなんだろう」って思った。社会で普通に働いて幸せに生きているひとが「人間として本物」なのか、社会からはずれて偽札作りに励む人が「人間として偽物」なのか。どっちも違うか。人は人だもん。

高級ブランド品の財布が「本物」なのか、それを真似して造られた財布が「偽物」なのか。まあ普通に「偽物の財布」っていうけど、革からしてみれば、「私は本物の革ですけどなんで偽物って言われなきゃいけないんですか!」って感じだと思うし。でも偽物に生まれてきてしまったからには偽物として生きていくしかないし。

何が言いたいのか、いまいちまとまらなくなってしまったんだけど、要するにどんな人にもモノにも価値はあるし、生きていく資格がある。ということが言いたい。

そのためには居場所が必要なんだと思う。自分を必要としてくれる人がいること。それだけで自分は価値がある人なんだと認めることができるから。

この物語に出てくる人たちは、偽物のお札を作ることを通して、居場所を見つけた。かけがえのない、愛情をつかむことが出来た。切なくても、やるせなくても、苦しくても、辛くても、帰る場所さえあれば、きっと生きていける。

 

広瀬すずが輝いてた。あの若さで、豪華な俳優陣と肩を並べて演技できるなんて天才すぎる。透き通るような刹那的な声、ハッと目を奪う整った顔。自然で気持ちの伝わる演技。大女優になるなと思った。

 

余談ですが、青羽を演じた小林聡美さんのエッセイ「東京100発ガール」は私の愛読書で、面白いのでぜひ読んでみてほしい。いつかこれもブログに書きたい。